ADHD(注意欠如多動症・注意欠陥多動性障害)
乳幼児期の発達の遅れはないか、あっても軽度で学童期にならないと発見されにくい障害です。
症状の中核は二つあります。一つは不注意、もう一つは多動・衝動性です。
それぞれの症状が目立つタイプを不注意型、多動・衝動型とし、両方の症状が顕著なタイプを混合型と便宜上分けます。不注意型でも若干多動性・衝動性があったり、多動・衝動型でもなんらかの不注意の症状があることが多く、見た目が異なるこの二つの症状には共通の基盤があると考えられています。
米国精神医学会の精神疾患診断統計マニュアルであるDSM-5ではADHDの症状を以下のようにあげています。
不注意の症状
- 学業、仕事などの活動中綿密な注意ができない、不注意な間違いをする。
- 課題または遊びの最中に注意の持続が困難である。
- 直接話しかけられたとき聞いていないように見える。
- 指示に従えず課題・義務をやり通すことができない。
- 課題や活動を順序だてることが困難である。
- 精神的努力の持続を要する課題をさける、いやいや行う。
- 課題や活動に必要なものをなくしてしまう。
- 外的な刺激で気が散ってしまう。
- 日々の活動で忘れっぽい。
多動・衝動性の症状
- 手足をソワソワ動かしたりとんとん叩く、椅子の上でもじもじする。
- 席についていることが求められる場面で席を離れる。
- 不適切な場面で走り回ったり高いところへ登ったりする。
- 静かに遊んだり余暇活動につくことができない。
- じっとしていられない、何かに突き動かされるように行動する。
- しゃべりすぎる。
- 質問が終わる前に出し抜いて答を言い始めてしまう。
- 自分の順番を待つことが困難で割り込みをする。
- 他人を妨害し、邪魔する。
以上の症状のうち6個以上が(不注意項目中あるいは多動・衝動項目中で6個以上という意味で、合わせて6個以上という意味ではありません)12歳以下で6か月以上持続し、それらの症状が2つ以上の状況で認められ、それらが学業、社会生活に支障をきたしている場合、ADHDと診断されます。正常児でも特に年少であれば上記の症状が若干認められるのはむしろ普通であり、ADHDというにはその症状がその子の発達の段階に比して顕著であるという必要があります。また「それらの症状が他の疾患ではうまく説明されない」といういつもの但し書きがつきます。
ADHDの治療
そもそもADHDの症状が正常児にも見られるものであり、正常児の場合「自然と」消失していったり、自ら反省して治していくものです。これはADHD児でも起こりうることであり、成長につれADHDの症状が軽減していくことはよくあります。ですから学業や家庭・社会生活で支障が出ないように環境調整をしてあげることが大切です。しかしながらそれだけでは不十分なことがあり、薬物療法が必要になる場合があります。
ADHDの薬物治療
ADHD薬物治療の第一選択はメチルフェニデートです。選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるアトモキセチンも保険承認されています。これらは食欲低下が高頻度に起きることが問題ですが、2017年3月からグアンファシンも承認されました。こちらは眠気、血圧低下がよくある副作用ですが1日1回投与でよく、メチルフェニデート、アトモキセチンが効きにくい多動・衝動性に有効ということで期待されています。