レビー小体型認知症も最近は一般の認知度も高くなり、研究も進んで知見も豊富となっていますので一般的な説明は他へ譲るとして、ここではやはり見過ごされやすい事項を二、三記したいと思います。
レビー小体というのは古くから知られた病理所見で、中脳黒質緻密帯の神経細胞減少とレビー小体が存在すればパーキンソン病と確定診断されていました。「レビー小体=パーキンソン病」という時代がしばらく続いたのです。
1976年に我が国の小阪憲司先生によって、中脳黒質に限らず脳のいたるところでレビー小体が出現する病態がびまん性レビー小体病として提唱されました。この言葉は基本的には病理学的概念ですが、従来パーキンソン病では出現しないとされていた認知症症状も出現するとしたところに、臨床的概念も含まれています。
ただやはり患者様の生前にレビー小体を証明するのは実質的に不可能なので、レビー小体型認知症という臨床概念が使用されるようになっています。
ちなみにびまん性レビー小体病はDLBDと略称されますが、これはdiffuse Lewy body diseaseの略です。レビー小体型認知症はDLBですが、これはDementia with Lewy bodyの略でちょっと違います。蛇足ですがLewyの英語の発音は「ルゥイー」で「レビー」ではありません。
上記の歴史的いきさつから最初はびまん性レビー小体病という病理学的概念のほうが先にあって、その診断が確定した患者様は当然すべてすでにお亡くなりになっていますから、その方たちの臨床記録をさかのぼってレビー小体型認知症の特徴が推測されていったのです。
症例を重ねるにしたがって、生前からレビー小体病に間違いないだろうという症例も増えていき、そこからレビー小体型認知症の特徴がさらに正確に抽出されるに至りました。
最近では数日から数か月にわたるような症状の増悪・改善の波、明らかな幻視、初期には記銘力低下はほとんどない、ことなどがその特徴とされています。
パーキンソン病様症状はあってもなくてもよいですが、あればレビー小体型認知症の可能性は高くなります。著明な起立性低血圧による失神も、もしあればレビー小体型認知症の確率が高くなります。
これらの特徴は一般の方には判断しかねるところが多分にありますので、レビー小体型認知症かどうかについても専門の医療機関にその判断をゆだねるのが良いでしょう。